4NQO誘発ラット舌癌実験にて明らかにされた舌癌関連遺伝子座(Tscc1~Tscc5)の存在より、舌癌発生のプロセスには単一遺伝子でなく複数の遺伝子が関与していると推察される。本研究の最終目的は遺伝子多型を用い4NQO誘発ラット舌癌実験で示唆された薬物代謝酵素遺伝子群(Tscc1上に存在するNQO1、Tscc2上に存在するCYPsおよびTscc3上に存在するGTPs)のヒト舌癌発生への関与を明らかにすることであるが、前実験としてラットを用い候補遺伝子の一つであるNQO1遺伝子の機能解析を行った。NQO1遺伝子のプロモーター領域に確認されたSNPsに対し、舌癌高感受性DAラットおよび舌癌低感受性WFラットを用いてLuciferase assayを行ったところ、優位な差が認められた。さらに現在、DAラット由来のNQO1遺伝子をWFラットに導入したトランスジェニック(Tg)ラットを用い、0.001%4NQO水溶液をTgラットとコントロールラットであるWFラットに飲用水として経口的に連続投与を行い、舌癌発生実験を行っている。 また、鹿児島大学病院において臨床的および病理組織学的に扁平上皮癌と診断された舌癌患者および対照群である非癌患者の末梢血液を採取・確保しDNAの抽出を行うために、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科に設置された倫理委員会において承認を得るための準備、および臨床医との具体的なDNAの採取や生活習慣情報の収集方法について話し合いを行った。
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