前年度までに、BCP8の可変領域cDNAにヒト型IgG1抗体に組み込んだ、ヒト型抗MUC1抗体の発現ベクター(huBCP8H)を構築した。そこで、口腔癌細胞を強力に破壊するために、次に、補体制御因子CD59を阻害する1F5の可変領域を組み込んだ3つの機能を持った遺伝子組み換え三重機能抗体(Tri-functional antibody ; TFA)の一つである補体制御膜因子CD59を抑制し、口腔癌特異抗原MUC1を認識するヒト型抗体発現ベクター(huBCP8-1F5)を構築した。これを哺乳類細胞に遺伝子導入し、培養上清を回収し、口腔癌への反応性を確認したところMUC1を発現している口腔癌細胞株HSC4へ結合することが確認できた。一方、補体制御膜因子CD55を阻害することができる抗体1C6を産生するハイブリドーマからmRNAを単離し、cDNAを合成後、5'RACE法により増幅した後、クローニングを行い、抗体の可変領域の遺伝子配列を決定することができた。CD59の時と同様に、各種遺伝子を組み合わせ、BCP8の可変領域cDNAにヒト型IgG1抗体に組み込み、さらにCD55を阻害する抗体可変領域を組み込んだヒト型三重機能抗体体の発現ベクター(huBCP8-1C6)を構築した。これらの遺伝子組み換え三重機能抗体は、口腔癌ではCD55、CD59などの補体膜制御因子の発現が高くため、より強い補体依存性の細胞障害反応が誘導できることが示唆された。
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