研究課題
シスプラチン(以下CDDP)は広く固形癌の治療に用いられているが、その獲得耐性は治療を行う上で大きな障害となっている。CDDP耐性を克服して有効性を増大させるためには、CDDP耐性細胞に限らず、感受性細胞においてもCDDP細胞内流出入の機構を解明する必要があると考える。CDDPの細胞内流出入については、銅トランスポーターの関与が示唆されている。本研究では、CDDP投与に際してCu(II)処理を行い、CDDP耐性細胞株(KBR/1.2)におけるPt-cell量の変化を確認した。また、銅トランスポーターであるATP7AおよびCTR1の発現量との間に関連があるのか、検討を行った。類表皮癌細胞株(KB)およびKBR/1.2両細胞株のCDDP感受性はCDDP処理後72時間における細胞生存率をMTT法にて検討した。細胞内蓄積(Pt-cell)量は原子吸光分光光度計を用いて測定した。ATP7A及びCTR1の検出はWestern Blotting法にて行った。両細胞株とも、Pt-cell量はCDDPの投与濃度に依存して増加したが、KBR/1.2はKBに比べて有意に減少していた。また、両細胞株ともPt-cell量はCDDPの処理時間にも依存して増加した。ATP7Aは、KBに比べKBR/1.2で有意に減少していた。また、KBではCDDPの投与によってATP7Aの発現量が有意に増加したが、KBR/1.2ではほとんど変化がなかった。CTR1はKBに比べKBR/1.2で若干少ないようであった。これらの結果から、CDDP耐性類表皮癌細胞株KBR/1.2におけるCDDPの蓄積の低下には、ATP7Aの減少が関与していることが示唆された。ATP7AおよびCTR1の発現量にCDDP投与濃度及び処理時間が与える影響については鋭意精査中であり、さらなる検討が必要である。
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Dent Traumatol
巻: 27 ページ: 300-4
DOI:10.1111/j.1600-9657.2011.00985.x