研究概要 |
本研究は悪性黒色腫細胞において高発現しているWnt5aに注目し、そのシグナリングを阻害することで原発巣と転移巣(骨)に対する治療薬を開発することを目的としている。我々は悪性黒色腫細胞の分泌するWnt5aが破骨細胞の分化を促進し、骨吸収力を上昇させるため、高頻度で骨転移が起こると考えて、「Wnt5aシグナリングを阻害することで悪性黒色腫の骨転移を阻害する。」ことを目指した。 そこで、まず破骨細胞にWntシグナル伝達経路があるかどうかを調べた。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7をRANKL存在下で培養し、破骨細胞様細胞を得た。これを用いて以下の分子の発現を検討した。Wnt receptorであるFrizzled(Fz)1~10については、Fz2が最も強く発現し、Fz1,4,5,6,8,9,10も発現していた。また、Fzの共役受容体LRP5,LRP6,およびRor2も発現していた。Receptorの存在が確認できたので、Wnt5aの破骨細胞分化に対する影響を調べた。ddYマウス骨髄細胞からM-CSFとRANKLで破骨細胞を分化させる系で、recombinant Wnt5aを作用させた。破骨細胞数は、非作用群と比べて約25%減少した。Wntは分子量約4万の糖タンパクであるが、recombinant Wnt5aでは糖鎖修飾等の状態が、野生型と一致するとは限らないという点を考慮し、この結果について、今後更に詳細に検討する必要がある。
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