研究概要 |
DNAのメチル化やヒストンのアセチル化等の異常はヒト悪性腫瘍において放射線・化学・免疫療法等に対する抵抗性をもたらすことが報告されており,このepigenetic eventを制御することがヒト悪性腫瘍に対する各種療法の奏効率を向上させることができると考える.ヒト骨肉腫細胞(OS)はFasやMHC class I chain-related molecules (MICs)を発現しており,NK細胞やCD8(+)T細胞等の抗腫瘍免疫細胞が発現するFas ligandやNKG2Dを介して殺腫瘍細胞作用を発揮する.しかしながら膜結合型FasやMICは,MMP等のproteaseの作用を受け遊離型(sFas,sMIC)となり,Fas/FasLおよびNKG2D/MICsの結合を阻害することにより,免疫細胞の殺腫瘍細胞作用を減弱させるといわれている.我々はsodium valproate (VPA)とHydralazille (Hy)併用によるFasおよびNKG2Dを介するOSの感受性に及ぼす影響を検討した.VPAとHyの併用は膜結合型FasおよびMICの発現を亢進させ,sFas(10-40%)やsMIC(最大30%程度)を有意に減少させた.またこれらの結果よりFas抗体およびNKG2Dを介したOSの細胞死を有意に増加させた.更にMMP9がsMIC形成機構に関与していることを証明した. 以上の結果より,DNAメチル化阻害剤とヒストン脱アセチル化阻害剤の併用はOSの抗腫瘍免疫細胞に対する感受性を増加させることが示された.VPAはすでに抗てんかん薬として,またHyは降圧剤として広く臨床応用され,安全性・至適濃度はすでに確認されている.今回使用した濃度はその範囲内であることから,人体への影響が少なく,かつ早期にOSの治療に応用可能であることが示唆された。
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