研究概要 |
Tooth Wearを機械的な摩耗、科学的な摩耗(酸蝕)の両面からとらえるために、Modified Wear Simulatorを用いて口腔内に近似した動き(tapping,sliding)を再現し、様々なpH環境下で、試験材料(市販のコンポジットレジン、試作コンポジットレジン)と対合試料(エナメル質、象牙質)両方の摩耗量を評価することを目的として実験を進めている。本年度は、基礎的段階として異なるフィラー配合の傾向を持つ4種の市販コンポジットレジンで摩耗試験を行い、その差異を検討した。手技の確立のため、蒸留水中での衝突摩耗試験を実施した。得られた結果からコンポジットレジンの耐摩耗性ならびに対合エナメル質摩耗量には、フィラーのサイズだけでなく、硬さ、形状やマトリックスレジンとの結合性が影響を及ぼす可能性が示唆された。旧来小さなフィラー粒子は、喪失しても粒子の抜けた後の空隙が小さいので、コンポジソトレジンの耐摩耗性は向上し、また対合歯の摩耗量も減少するとされてきた。現代のハイブリッドレジンはそのフィラーの開発コンセプトや製造法も様々で分類の定義が不明瞭になりつつある。 今回は市販品における検討ではあったが、ナノサイズのフィラーを配合しているコンポジットであっても、そのクラスターの表面処理が奏功しておらず、結果として荒れた摩耗表面を示した。逆にサブミクロンフィラー配合のコンポジットにおいても、フィラーの硬さをコントロールし、表面処理が機能してマトリックスレジンと結合しているものでは、フィラーの脱落は全く見られなかった。 今回の結果から、今後のコンポジットレジンのデザインに新たな提言をしていくことが可能になると思われる。
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