これまで数多くの研究者によってなされてきたコンポジットレジンの物性向上に関する研究、特にin vitroの摩耗加速試験は、現在の保存修復学領域におけるコンポジットレジン修復の耐摩耗性において、確固たる基礎を築いてきた。しかしながら、その酸性環境下での評価、ならびに象牙質に対しての評価は未だに十分に検討されているとは言えない。本研究と類似の研究は未だ無く、Tooth Wear、特に歯牙酸蝕症に対する修復処置についての判断基準に対する新しい解決策となると期待される。また、口腔内に近い環境で、摩耗挙動が天然歯に近い材料を開発することで、今後のTooth Wearに対する修復処置をより確実なものにすることができる。現在歯科界で急務とされているTooth Wearに対する治療の方向性を示す上で、摩耗による物理的な浸食と、酸による科学的な浸食をin vitroで融合させた今回の取り組みは大いに意義のあるものと思われる。本年度は昨年度の研究に引き続き、機能性モノマーの象牙質並びにエナメル質に対する効果を中心に、硬組織の人工材料での処置後の界面の酸耐久性を詳細に評価することができた。
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