本研究ではH19-20年度の研究課題「接着性Y-TZPインレーブリッジの臨床応用の検討」により得られた知見に基づいて、実際の臨床を想定しY-TZPブリッジの接着にレジンセメントを用いる際に被着面を汚染する要因について検討した。ヒト抜去健全大臼歯をより得られた露出象牙質面を耐水研磨紙で研磨して被着面とし、無作為に3群に分割し、象牙質研磨面をマイクロモータにより以下の3群で注水した。1群では従来型マイクロモーターハンドピース(注油後オイル抜きを行わず)、II群では従来型マイクロモーターハンドピース(メーカー指定の方法で注油、オイル抜き後)、およびIII群では無注油型マイクロモーターハンドピースから各条件とも被着面に30秒注水した。次いでI-III群をそれぞれ2群に分け、2種の1ステップ接着システムにより被着面処理を行い、コンポジットレジンを築成、光重合した。24時間水中保管後、微小引張試験に供した。本実験で採用した2種の1ステップ接着システムにおいて、注油を必要としないハンドピースで注水した場合、オイル抜きの有無にかかわらす従来型ハンドピースを用いた場合と比較して、有意に大きい象牙質接着強さが得られた。これよりY-TZPブリッジをレジンセメントにて支台に接着する場合、支台の形成時や仮着材の除去時においては無注油型のマイクロモーターハンドピースを用いることで、接着阻害因子を排除可能であり、結果として接着強度を向上させることができることが示唆された。
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