研究概要 |
本年度は,発振波長が2940nmであるEr : YAGレーザーを歯質表面に照射したときの温度について,赤外線導光ファイバーと2種類の赤外線検出素子を組み合わせた輻射温度計を用いて測定した.その結果,表面温度はレーザーエネルギーやエネルギー密度の増加と共に大きくなった.しかしながら,歯質表面がレーザー照射に起因して除去されているにもかかわらず,表面温度は歯質の主成分であるハイドロキシアパタイトの融点と比較し,全レーザー照射条件で著しく低くなった.また,同一箇所に繰り返しレーザー照射すると,除去体積は増加するものの表面温度に変化がみられないことから,レーザー照射で生じた熱による再凝固層の形成や炭化が生じていないことが示唆された.Er : YAGレーザー照射時の表面温度が定量的に評価されたことは,レーザー照射に起因した殺菌メカニズムの解明にとって極めて重要であり,本年の計画は十分に遂行されたと考えられる.その他,チタン乳液に超音波振動を負荷したときの温度変化について,高精度熱電対温度計を用いて測定を行った結果,乳液内部にレーザー照射したときの変化と比較して温度上昇が少ないことが明らかとなった.さらに,チタン乳液内部にレーザー照射したときの誘起衝撃応力を測定するための実験装置の構築も行った. 平成22年度は,製作した衝撃応力測定装置を用いて試料内部に生じる誘起衝撃応力を測定する.レーザー種類,レーザー条件,吸収剤の有無,塗布材厚み,乳液濃度などの諸因子と誘起衝撃応力との関係について明らかとする.また,菌浮遊液内部にレーザー照射を行い,培地に培養したコロニー数との関連からレーザー照射に起因した熱的作用,物理的作用,化学的作用殺菌のいずれが殺菌効果に最も影響を与えるかを評価する.
|