研究概要 |
プロトンによるTRPV1活性化を介した発痛物質CGRPの発現調節ならびに細胞外分泌に至るまでの分子メカニズムの解明を目的に、以下の実験を行った。1.後根神経節におけるTRPV1、CGRPおよびリン酸化CaMKII発現の免疫組織学的検索。2.酸刺激誘導性のCREB転写活性促進作用におけるCaMKIIの関与。3.CGRP分泌に対する酸刺激の効果。1.については、ラットの後根神経節の凍結切片を作製し、それぞれについて蛍光二重免疫染色を行ったところ、同一ニューロンにおいてそれぞれが共局在を示すことが確認された。2.については、F11/TRPV1を用いて酸刺激(pH5.5の培養液)に対するCREB転写活性をルシフェラーゼアッセイにて測定し、さらにCaMKI特異的阻害剤であるKN-93(1μM,5μM)を作用させたところ、酸刺激誘導性のCREB転写活性は濃度依存的に抑制された。すなわち、CaMKIIは酸刺激誘導性のCREB転写活性に対して、促進的に作用することが明らかになった。3.については、初代培養DRG細胞に酸刺激を10分間行い、培養上清中へのCGRPの分泌をEHSA法にて測定したところ、CGRP分泌の促進が認められた。また、この効果はI-RTX(10μM)により濃度依存的に抑制された。 以上のことから、プロトンによるTRPV1の活性化はCaMK-CREB経路を介してDRGにおけるCGRPの発現を誘導していることが明らかになり、炎症性疼痛の分子メカニズムの一端が解明された。
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