研究概要 |
本年度は、デンタルユニット給水系バイオフィルムに対する効果的な管路洗浄装置を開発するため、まず、最適な薬剤の検討を行った。次亜塩素酸(有効塩素濃度10ppm/50ppm/250ppm)、ソフト酸化水(有効塩素濃度30ppm/50ppm)の各種薬剤1ml中に1×10^7CFU/mlに調整した菌液を加えて5分間放置。その後、滅菌蒸留水にて希釈した菌液をR2A寒天平板培地に播種し、25℃で7日間培養して細菌数を測定した。その結果、いずれの薬剤も良好な殺菌効果を示した。 次に、デンタルユニット給水系の管路に使用されている金属に対して影響がないかを調べるために、薬剤の金属に対する腐食性について検討した。上記実験で使用した各種薬剤中に種々の金属試料(SUS430F, SUS303, SUS304, SUS316, C3664BD)を浸漬して室温で振盪保管し、IPC発光分光分析装置(SPS7800, Seiko)を用いて金属溶出量を測定した。なお、ステンレス鋼についてはFe,Ni,Crの量を、真鍮についてはCu, Znの量を測定した。その結果、SUS430F, SDS303、C3664BDでは、ソフト酸化水(30ppm)>ソフト酸化水(50ppm)>次亜塩素酸の順に金属溶出量が多かった。SUS304ではソフト酸化水(30ppm)でのみ金属の溶出を認めた。SUS316のみ、いずれの薬剤においても金属は溶出しなかった。さらに、各種薬剤に浸漬した金属試料表面を1週間毎に色彩色差計(CR-100,ミノルタ)を用いて測定し、CIE1976L^*a^*b^*表色系にて得られた計測値を浸漬前試料と比較して、JIS Z 8730に準じて色差ΔE*abを算出した。その結果、SUS430F, SUS303ではソフト酸化水(30ppm)>ソフト酸化水(50ppm)>次亜塩素酸の順に色彩変化が大きかったが、C3664BDでは、いずれの薬剤も同程度の色彩変化を認めることがわかった。
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