研究概要 |
本年度は研究に用いる人工う蝕サンプルを作製し、3種の接着性レジンシステムでう蝕細菌をシールドしてう蝕細菌の不活化についての検討を行った. 1. 人工う蝕象牙質試料の作製 ヒト抜去大臼歯象牙質を1×1mm幅に薄切し、側面ならびに根面については細菌の侵入を防ぐようにマニキュアコーティングを行った.切片を滅菌処理した後、YSBY+0.5% sucrose液体培地中に浸漬し、Streptcoccus mutans UA159株を接種して1~4週間の期間について人工う蝕を形成した. 2. う蝕進行程度の解析 人工う蝕切片の切断面を走査型電子顕微鏡を用いて,その脱灰程度およびう蝕細菌の局在について観察を行った.さらに,微小硬度計を用いてビッカース硬さを測定することによって,人工う蝕切片の脱灰程度についても検討を行った.その結果,最深部では100μm以上の深さにおいてレンサ球菌が検出された.表層から100μmまでの脱灰程度については,表層直下10μmでは2.5±7.0(Hv),表層から100μmでは38.8±15.6(Hv)であり,表層からの深さに依存的にビッカース硬さの平均値が大きくなる傾向を示すものの,ばらつきが多く均一に脱灰が生じていない可能性が示唆された. 3. シールドしたう蝕細菌の生菌数計測 抗菌性が期待される3種の接着システムを用いてう蝕象牙質を接着修復した後にPBS中に浸漬した.0~2ヶ月までの各期間で誌料の端部から得られた象牙質を回収してTSBY寒天培地で培養してコロニー数を計数した.その結果,人工う蝕作製期間が4週間のグループについてのみコロニーの出現が認められた.今回の結果では,材料間の違いは明らかでなかった一方で,未重合のモノマーが有する酸性が抗菌性に大きく関与する可能性が示唆された.
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