研究概要 |
1.抗菌成分の濃度がう蝕細菌の不活化に及ぼす影響 抗菌モノマーであるMDPBまたはクロルヘキシジンを用いて,接着システムを試作し,前年度と同様の方法でシールド直後から4ヶ月後までのう蝕細菌の生菌数を計測した。その結果,人工う蝕の作製期間が4週間以上のグループについてはコロニーの出現が見られた.今回の結果では,材料間および接着システム,期間の違いは明らかではなかったが,未重合のモノマーが多いと思われる条件下で抗菌性が高い可能性が示唆された. 2.シールド・レストレーションが有効なう蝕の進行程度 ヒト抜去歯象牙質を粉末状にした後,TSBY培地中に浸漬し、Streptcoccus mutans UA159株を接種して1~4週間の期間について人工象牙質う蝕を形成した.各接着システムでシールド・レストレーションを施した試料をTSBY培地に浸漬し、嫌気ボックス内に保管する。シールド直後から4ヶ月後までの試料から採取したう蝕象牙質をTSB寒天培地で48時間培養後に出現したコロニー数を計測した。その結果,シールド3日後以降でう蝕細菌の発育が確認された。今回の結果からは,シールド・レストレーションを施す前の人工象牙質う蝕試料の乾燥程度がモノマーの重合性に影響することから,モノマーの重合性がシールド・レストレーションの成否に大きく関与すると考えられた。 3.接着界面のコラーゲン分解酵素活性 酵素活性が増大したう蝕象牙質はシールド直後では抑制されるものの,3日後以降で抑制効果は消失した.う蝕象牙質中に多量に含まれる水分に起因する不十分なモノマーの存在が大きく影響していると考えられた。 以上のことから,抗菌性はモノマーが未重合の状態で発揮され,水分が多い状態で浸透・重合し,その後は高い疎水性を発揮する接着システムがシールド・レストレーションに有効であると考えられた。
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