研究概要 |
本年度は研究計画に基づき、1)in vitroおよび2)in vivoの両実験を行った。 1.1 断髄時の歯髄組織への熱刺激は歯髄に障害を与えることが報告されており、本研究の目的とする断髄後の象牙質-歯髄複合体再生療法確立のために必要な残存歯髄組織を壊死させる可能性がある。よって、浸潤麻酔下の虚血状態を想定した低栄養条件下での象牙芽細胞様細胞の熱耐性について研究した。象牙芽細胞様細胞は耐熱性を有し、熱刺激によりapoptosisに陥るものの生存細胞は象牙芽細胞の特徴を有すること、低栄養条件下では熱刺激の影響が増強することを報告した(Morotomi et al. : IADR, Miami, Florida,諸冨ら:日歯保存学会春季大会,札幌、他2報)。 1.2 本研究ではこれまで研究してきたFGF-2とともに、BMPsを用いて分化誘導することを目指している。このため、BMP-2の象牙芽細胞様細胞分化に果たす影響と、転写因子NF-κBはBMPによる骨芽細胞分化を抑制することについて研究し、報告した(鷲尾ら:歯科基礎医学会,新潟、平田ら:再生歯科医学会,北九州、Washio et al. : The 2^<nd> Japan-Korea Joint Symposium on Bio-microsensing Technology, Kitakyushu、他1報)。 2.1 これまでに我々はFGF-2徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子により断髄部に象牙質-歯髄複合体様構造が誘導されることを報告しているが、断髄部全体にわたり硬組織が形成され理想的な形態ではなかった。よってゼラチンハイドロゲル粒子に含浸させるFGF-2の濃度を調整し、断髄部上面のみに硬組織を誘導させるためのFGF-2の至適濃度について報告した(Ishimatsu et al. : J Endod. 35, 858-865, 2009)。 2.2 これまでの研究でスキャホールドとして使用しているコラーゲンスポンジでは炎症細胞の浸潤が強く、これに変わりヒアルロン酸スポンジがスキャホールドとして適していることを発見し、報告した(Inuyama et al. : J Biomed Mater Res B Appl Biomater. 92B, 120-128, 2010)。
|