研究概要 |
本年度は,昨年度に行った研究をさらに発展させるための研究として,1)BMPsの石灰化組織形成誘導機構に関する研究,2)臨床応用を前提とした断髄時の刺激による歯髄組織への影響についての研究を遂行し,多くの知見を得ることができた. 1)本研究においては,すでに報告しているFGF-2による歯髄細胞増殖ならびに血管形成誘導に引き続き,BMPsによる象牙芽細胞への分化誘導能を象牙質-歯髄複合体再生療法に応用することを目的とする.そのため,石灰化組織におけるBMPシグナルの細胞分化誘導メカニズムについての研究を行い,NF-κBを抑制することで石灰化組織形成の促進が可能であることを報告した(平田ら:九州歯科学会総会,北九州.平田ら,歯科基礎医学会総会,東京.Hirata S et al.: General Session and exhibition of IADR, Barcelona, Spain.). 2.1)断髄の際には浸潤麻酔を用いるが,広く一般的に使用される局所麻酔薬には血管収縮剤が添加されており,歯髄が虚血状態に陥ることが報告されている.また,断髄時の回転切削器具使用により生じる発熱は,歯質切削時の歯髄への大きな刺激となることも報告されている.虚血状態と熱刺激が歯髄組織へ与える影響を調べるため,虚血状態を想定した低栄養条件下における熱刺激の,歯髄由来象牙芽細胞様細胞株(KN-3細胞)への影響を確認し,虚血状態においては熱刺激の影響が増大すること報告した(諸冨ら:第133回日本歯科保存学会学術大会,岐阜.Morotomi T et al.: J Endod, accepted in 2011). 2.2)断髄時の熱刺激により歯髄が壊死すると,本研究により実現を目指す断髄後の残存歯髄組織より象牙質-歯髄複合体再生を誘導することが不可能となる.そのため,歯髄細胞の熱耐性を向上させ歯髄壊死を防ぐことを目的として,KN-3細胞に熱耐性を誘導するメカニズムについて研究し,熱ショック蛋白質の発現と細胞周期の停止を誘導することによる耐性向上誘導機構について報告した(諸冨ら:第132回日本歯科保存学会学術大会,熊本.福岡歯科大学学会総会,福岡.).
|