歯科用接着性修復材料の耐久性を改善するために象牙質再石灰化誘導活性を有する接着性モノマー、イオンを徐放するボンディング材を試作し、それぞれの石灰化誘導能について評価を行った。 試作ボンディング材として、再石灰化誘導能を有する接着性モノマーを用いたボンディング材、再石灰化誘導活性を有するイオンを徐放するボンディング材を用いた。in vitro象牙質再石灰化モデル実験系を用いて再石灰化能の評価を行った。さらに、また、上記のボンディング材硬化物からの溶出液を用いて同様の実験を行い、溶出イオンの再石灰化に与える影響を調べた。また、インキュベート24時間後に得られた試料に関して、走査型電子顕微鏡(SEM)により石灰化物の形態学的観察を行ない、微小領域X線回折装置により結晶の分析を行った。その結果、コントロールと比較して試作の再石灰化誘導モノマーは、早期に石灰化を誘導し、石灰化誘導量も有意に高い値を示した。また、イオン徐放性ボンディング材からの溶出液を用いて石灰化溶液を作成し、石灰化誘導実験を行ったところ、コントロールと比較して早期に石灰化を誘導し、石灰化誘導量も有意に高い値を示した。SEM観察では、どの群においても24時間後に板状のHAP結晶が確認された。得られた石灰化物のX線回折パターンからHAPに特徴的なピークが認められた。 これらの結果から、再石灰化誘導能を有する接着性モノマーを用いたボンディング材、再石灰化誘導活性を有するイオンを徐放するボンディング材は、ホスビチンーアガロースビーズ複合体による石灰化に影響を与えることが示された。これにより、象牙質接着界面においてS-PRGフィラーからの溶出イオンが脱灰象牙質再石灰化に影響を与える可能性が示唆された。
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