ウイント(Wnt)は細胞間相互作用を仲介し形態形成過程において多様な役割を果たすことが知られている。しかしながら、歯胚形成におけるWnt5aの機能的な役割は十分に明らかになっていない。本実験では、歯の発生過程において間葉組織に特異的に発現しているWnt5a遺伝子発現を胎生期から生後の歯髄形成期までin situハイブリダイゼーション法で解析した。またWNT5Aの機能獲得実験として胎性14日齢マウスの臼歯歯胚を摘出し、器官培養系でWNT5Aビーズを用いた過剰発現実験と細胞死阻害剤(z-VAD-fmk)を組み合わせ、Wnt5aシグナル阻害が歯胚形成に与える影響を検索することによりWnt5aの役割を解析した。結果として、WNT5Aの過剰発現により歯胚の形成遅延が生じ、歯の大きさは小さく、咬頭の高さが低くなっていた。Wnt5aは、周囲の非歯胚領域の細胞死を誘導するが、歯胚領域の細胞死は誘導しなかった。歯胚領域では、Wnt5a、Fgf10、Bmp4、Shh間相互作用により細胞死をレスキューすることにより、歯胚形成過程における細胞死のバランスを調整し、咬頭形成および歯の大きさの調節に関与することが示唆された。
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