研究概要 |
平成21年度の研究計画に基づき,生理的成長段階でのラット下顎頭軟骨内を通過する音速の経時的変化を超音波顕微鏡(SAM)により計測し,下顎頭軟骨弾性の生理的発達を明らかにすることを目的とした.被験動物には,生後7,12,16および20週齢雄性Wistar系ラット(各群7匹ずつ)合計28匹を実験に使用した.ラットを灌流固定後,下顎骨を取り出し,脱灰した.脱灰後,通法に従い厚さ5μmのパラフィン切片を作製した.これらの切片に対しSAMを用いて画像撮影を行った.また同切片に得られたSAM像から下顎頭軟骨を通過する音速を計測し,各群間において統計的に比較検討した.また下顎頭軟骨弾性変化に関与していると考えられるI・II・X型コラーゲンおよびアグリカンの発現について免疫組織学的観察を行った.さらに,サフラニンO(SO)染色を施し組織を同定するとともに組織学的検討に供した. SAMの画像解析度は,SO染色像と比較して遜色はなく,下顎頭内の音速分布を鮮明に可視化できた,またSAM画像から得られた各群間の平均音速は7週齢で1,541m/s,12週齢で1,580m/s,16週齢で1,615m/sそして20週齢では1,623m/sであった.歴齢の異なる群間の比較から,下顎頭軟骨内を通過する音速は成長とともに有意に上昇することが示された.免疫組織学的検討から,I型コラーゲンは下顎頭表層の結合組織性皮膜および軟骨下骨に局在が認められた,II型コラーゲンおよびアグリカンは下顎頭軟骨のみに局在が認められた,さらにX型コラーゲンは下顎頭軟骨と軟骨下骨の境界領域にのみ局在が認められた. 以上より,下顎頭軟骨弾性は生理的成長とともに経時的に低下していくことが示唆された.これにはコラーゲン性および非コラーゲン性タンパクの架橋構造の変化,成長における咬合力変化が関与していることが推察された.
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