研究概要 |
本研究でのモデル作製にあたり,まずCT撮影を行った.患者は副鼻腔炎にて精査が必要な患者である.CT撮影にはSiemens社製(Elangen,Germany)Sensation 64を使用した.撮影条件はスライス間隔3mm,撮影時間は約10秒であった.読影に影響を及ぼさないことを確認し,患者に同意を得た上で,撮影中,補綴的に発音障害の生じやすい/i/の発音の構えをした状態で撮影を行った. 次に猪原らの方法に従い,3次元構築ソフト(Mimics12.11,Materialise NV)を用いて声道を抽出し,STL(Standard Triangulated Language)形式ファイルに変換後,3D作成ツール(FreeForm,SensAble Technologies,Inc.)を用いて,ラピッドプロトタイピング用データを作成した.3Dプリンターにより声道模型を製作した.完成したの声帯相当部に,声帯原音をシミュレートした音源を設置し,声道模型を通過して口唇相当部より発せられる音声の収集を行い,5人の被験者による明瞭度検査と,Computer Speech Lab 4300(Kay Pentax USA)を用いてFFT分析を行ったその結果,/i/発音時の声道模型の作製に成功し,明瞭度検査では100%を示し,FFTを用いた音響分析では平均的なFormantときわめて近い位置に共鳴周波数が生じることを確認した.これにより,音声障害の出やすい/i/の音にターゲットをあてたシミュレーションモデルが確立されたといえる. 今後は,声道模型を用いて,設計の異なる補綴装置を装着した際の構音の比較,発音障害を惹起する顎欠損形態の模索などを,声道模型上でのシミュレーションにてデータ収集をし,臨床へのフィードバックに貢献したい.
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