臨床実践力を培うための(1)模擬ケースの開発、(2)機材の開発・設置、(3)養成プログラムの研究、(4)養成プログラムの教育効果研究をH21年度の目標とした。(1)一般的な治療情報を集め、OSCEケース作成と同様に、保存修復治療(う蝕治療、楔状欠損)、補綴治療(前装冠、金属冠)のケースを開発した。汎用性を高めつつ、臨床現場の流れ、臨床手技の実践を可能とする内容を検討した結果、「診断」を終え、2回目以降の治療として加療するケースとした。診断時の情報(患者情報、主訴、現病歴等)はケースシートに記載し、術者立場の明確化のため、勤務形態情報も示した。(2)治療現場と管理者の間を、10mモニターケーブルで結び、別部屋からの観察を可能とした。一般の部屋で歯科診療室再現という点で、改善の余地はあるがほぼ良好な環境を得ることが出来た。管理者はカメラ(3台)で術者を観察し、当初は音声のみでの指示を行なったが、管理者が患者役としてモニターを通し会話することで、実践現場に近い臨場感を体感できる環境を構築した。(3)(1)、(2)を終了した後、10名の被験者(臨床経験4年~30年の歯科医師)の協力により開発ケースを実施し、撮影映像をハードディスクに保存し、術者にフィードバックし、意見を抽出した。結果、1)機材への慣れの問題、2)マネキン対応の問題(うがい、会話)、3)カメラによる緊張、4)機材不足等の改善点のほか、5)客観分析の良い機会(姿勢、動作、口調)、6)歯科医師のトレーニングへの応用、7)術(前中後)の会話を組み入れたケース作成、8)口腔内診査への応用、9)コミュニケーション部分を活かしたケース開発(臨床の多様性)、という意見も得た。(4)についてはH22年度実施となったが、H21の成果として、・本システムが場所、機能的に運用できることが明らかとなり、ケースのバリエーションを増やすことで、活用できる範囲が広がる可能性が示唆された。
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