H22年度は、前年度に得られたセッティングにて、学生・歯科研修医への教育効果の確認を目標とした。よりスムーズな治療環境再現のために、患者音声はワイヤレススピーカーでの伝達とし、カメラ増設、材料・器材の充実化、評価シートの確立を行った。シナリオは、術者設定・診療時間設定・患者情報・治療部位について数種類ずつ作成し、その組み合わせにて実施内容を決定できるようにした。この環境設定を歯科医師、歯科衛生士による実施で確認後、本システムの教育導入実験として、歯学科学生4名、口腔保健学科学生5名、歯科研修医5名に、印象採得・仮歯製作合着のシナリオについて28回の実験を行った。参加者はシナリオ診療を実施、管理者は撮影・評価シート記入、患者役会話を担当し、シナリオ実施後には、参加者は撮影ビデオを観察・自己評価シートの作成、管理者評価と自己評価を比較して改善点の抽出をした。撮影DVD・評価シートを手元に数日間の自己学習後、再度同シナリオを実施、初回と同様に評価を行い、診療の改善点確認および臨床実践力養成教育の可能性をアンケートにより聴取した。参加者の診療能力レベルに違いはあるものの、主に感染対策・医療面接における改善点が初回に見出され、2回目には改善が認められた。自己学習は、撮影DVD・評価シートをもとにした学習が多く認められ、利点として、撮影映像にて自分の診療行為を客観的に評価することが学習促進につながるという意見が多くあった。患者導入から治療終了まで一連の診療実習、マネキンと会話が成立する実習、診療室に近い緊張感を持つことができる実習等の理由で、ほとんどの参加者が新たな実習形態としてカリキュラムへの導入希望をした。撮影映像による客観的自己評価をもとにした臨床実技(技術・医療面接)養成教育システム開発を目的としてきたが、本システム活用が臨床実践力養成に有効であることが示唆された。
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