今回の研究では本学顎義歯外来を受診する術前患者を対象に術前、術後1~2週間、術後1ヶ月程度、術後3ヶ月、術後半年、術後1年をめどに、各時点での機能評価とアンケート調査により患者の回復度を明らかにし、発音機能評価で得られた客観的評価と患者主体のアンケート調査で得られた主観的評価の相関関係を検討することを目的としている。方法は発音機能評価である、発語明瞭度検査(日本語100単音節について患者音声を録音し、5人の検査者が聞き取りを行う)、フォルマント分析(5母音のフォルマント値よりFormant1-Formant2グラフを作成し舌の動きを中心とした構音障害を確認する)、喉頭雑音のパラメーター分析(喉頭雑音の程度により口腔から声帯における異常を検出する)を行った。また、QOLのアンケート調査としてOHIP-J ; Japanese version of the Oral Health Impact Profile(患者の口腔関連QoLを測る)、UW-QOL ; University of Washington Quality of Life Questionnaire(頭頚部領域で広く用いられているアンケート調査法)を行った。本年度得られたデータをさらに経時的に追跡し、また今後さらに研究に参加する患者総数を増やす必要があると考えられる。また、本学歯学部口腔外科、本学医学部頭頚部外科および他施設からの顎顔面欠損が生じる可能性のある患者の紹介を受ける際、術前からの診査診断、術直後に装着するサージカルオブチュレーターの作製のために本学歯学部顎義歯外来に受診していただくよう、各科の更なる連携を強め、理解を深めていきたい。
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