今回の研究では本学顎義歯外来を受診する術前患者を対象に術前、術後1~2週間、術後1ヶ月程度、術後3ヶ月、術後半年、術後1年をめどに、各時点での機能評価とアンケート調査により患者の回復度を明らかにすることを目的としている。方法は発音機能評価である、発語明瞭度検査、フォルマント分析、喉頭雑音のパラメーター分析を行った。また、QOLのアンケート調査としてOHIP-J(Japanese version of the Oral Health Impact Profile)、UW-QOLver4(University of Washington Quality of Life Questionnaire version 4 )を行った。本研究により手術前を基準に、周術期における患者の発音機能の程度や顎義歯装着における発音機能の回復度を知ることができた。さらに客観的な機能評価に偏ることなく、患者立脚型アウトカムであるQOLのアンケート評価による考察も行うことができた。このことにより、周術期におけるイミディエートサージカルオブチュレータの重要性をあらためて認識することができた、またイミディエートサージカルオブチュレータでは十分に向上が得られない機能においても、最終義歯によって改善がみられることがわかった。顎顔面領域において、手術後の機能回復に顎顔面補綴を用いることの有用性は以前より知られているため、手術後からの顎顔面補綴装置の製作は多くの施設で行われていると思われる。しかしながらさらに顎顔面欠損が生じる可能性のある手術前からの診査診断、手術直後に装着するイミディエートサージカルオブチュレータの作製を行うことが患者QOLの向上の為に必要であり、手術前より補綴科医による介入を行うチームアプローチが必要であると考えられた。
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