研究概要 |
動物モデルの睡眠中の自律神経活動と咀嚼筋活動の機能的相関を生理学的・解剖学的手法を用いて解析することを目的として、本年度は、次のような実験を実施した。 実験動物の咀嚼筋活動を自由行動下において、脳電図、眼電図、心電図、頚部筋筋電図と共に記録した。脳波、心電図、筋電図の解析結果から、睡眠中の咀嚼筋活動量は平均心拍数と大脳皮質活動の増加時に高く、開口筋と閉口筋で増加率に差が認められた。さら、同一の実験動物に一定の期間をおいて生理的食塩水とclonidine(1μg/kg,10μg/kg)を腹腔内投与して睡眠と咀嚼筋活動、心電図活動に与える影響を調べた。生食投与時と比べclonidine投与下では、心拍数とレム睡眠が減少したが、減少率は投与量の増加に伴って大きかった。一方、ノンレム睡眠中の咀嚼筋活動は、開閉口筋ともにclonidine投与量増加に伴って減少する傾向が認められた。しかし、clonidine投与時においても、心拍数と大脳皮質活動の増加時に咀嚼筋活動量が増加を示した。clonidine投与の影響は、おもに薬物投与後から2~4時間で観察された。したがって、alpha2アゴニストは睡眠構築を変えノンレム睡眠での咀嚼筋活動を抑制するが、脳波・心拍上昇に伴う咀嚼筋活動発現様式は保持されている可能性が示唆された。また、電気刺激を与えて咀嚼筋活動を誘発できる大脳皮質部位に順行性トレーサーを注入すると、これらの部位から三叉神経運動核周囲の脳幹網様体への神経投射が認められた。したがって、脳波活動に伴う咀嚼筋活動上昇には、皮質から三叉神経運動前ニューロンへの直接投射が関与する可能性が考えられる。
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