動物モデルの睡眠中の自律神経活動と咀嚼筋活動の機能的相関を生理学的・解剖学的手法を用いて解析することを目的として、次のような実験を実施した。 実験動物の咀嚼筋活動を自由行動下において、脳電図、眼電図、心電図、頚部筋筋電図と共に記録した。まず、clonidineの腹腔内投与が、睡眠や咀嚼筋活動、心電図活動に与える影響を調べた。clonidine投与下では、心拍数とレム睡眠が減少した。また、睡眠覚醒時と相関して生じる心拍数の変動幅画現象した。clonidine投与後に、睡眠中の咀嚼筋活動に減少傾向が認められたが、咀嚼筋活動時には心拍数と大脳皮質活動の一過性の増加が認められた。したがって、大脳皮質活動と咀嚼筋活動との機能的な相関を解剖学的に検索するため、電気刺激によって咀嚼筋活動を誘発できる大脳皮質部位に順行性トレーサーを注入した。大脳皮質からは、咀嚼筋を支配する三叉神経運動核周囲の前運動ニューロンや中脳、視床への神経投射が認められ、その投射パターンは、種々の顎運動を誘発する大脳皮質部位によって異なっていた。したがって、睡眠中の咀嚼筋活動発生には、睡眠中の一過性の覚醒時に活動性が増加する大脳皮質が、皮質から三叉神経運動前ニューロンへの直接投射を介して、何らかの影響を与える可能性が考えられる。
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