本年度は、抜歯後における歯槽骨の吸収予測を行うことを目的とし、抜歯前後における歯槽骨の形態計測ならびに代謝マーカーの被験者毎のサンプリングを行った。まず同臨床研究の実施にあたり大阪大学大学院歯学研究科倫理審査委員会にて承認を得た後、当院にてインプラント治療を希望した患者に対して、抜歯前および抜歯後3か月後におけるCT撮影と、同時期に加え、抜歯後1週、3週、1か月における血液検査ならびに尿検査を施行することに同意の得られた3名8部位を対象に検査を行った。検査項目は、CT撮影により得られた画像データから、歯槽骨吸収の程度についてルーペを使用し、拡大視野にて計測を行った。また尿検査ならびに血液検査より、骨代謝マーカーとしてアルカリフォスファターゼおよびNTX(I型コラーゲンN末テロペプチド)をモロクローナル抗体を用いたELISA法により測定し、骨の代謝活性を検討することにより、抜歯後に歯槽骨が骨形成傾向にあるのか、骨吸収傾向にあるかの指標とした。得られた結果より、明らかな有意差は認められないものの、抜歯後の歯槽骨の変化としては、隣在する歯槽骨と連続性を持たず大きく吸収あるいは速やかな歯槽骨形態の回復が認められない場合は、抜歯後より骨吸収マーカーであるNTXが増加傾向にあり関連があることが考えられる。う蝕、歯周病といった抜歯理由、部位や性差についてはサンプル数の問題から比較検討は行っていないが、今後サンプル数の増加によりさらなる明確な関係性が認められると考えられ、歯槽骨吸収予測の基礎データとなりうると思われる。
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