本年度も昨年に引き続き、抜歯後における歯槽骨の吸収予測を行うことを目的とし、抜歯前後における歯槽骨の形態計測をCTレントゲンにて行い、代謝マーカーの被験者毎のサンプリングを血液検査および尿検査にて行った。前年度の結果では、抜歯前後における歯槽骨の吸収と骨代謝マーカーに明らかな有意差は認められず、本年度、サンプル数を大きくし検討を行ったが、昨年度同様、明らかな有意差をもった関係性は認められなかった。一方、隣在する歯槽骨と連続性を持たず大きく吸収あるいは速やかな歯槽骨形態の回復が認められない場合は、昨年同様、抜歯後より骨吸収マーカーであるNTXの増加傾向が認められた。またこれらの関係は、本年度の検討項目であった部位および性差との関係においても有意差は認めなかったが、歯周病が原因で抜歯となった場合のみにおいて、う蝕が原因となった場合と比較して有意にNTXの増加を抜歯前後から認めた。ただし歯周炎そのものが歯槽骨破壊を引き起こすことも影響していると考えられる。本研究の結果から明確な個人差は、今回ターゲットと考えた歯槽骨吸収マーカーであるNTXのみでは明確に認められなかったものの、歯周炎を患った歯を抜歯した場合では、骨吸収マーカーの増加を伴う歯槽骨の吸収が大きく進むことが明らかとなった。すなわち今回利用したNTXマーカーは、抜歯予定である歯がどの程度炎症症状を呈しているかの判断基準にもなり得、その増加が認められればその後の歯槽骨吸収が大きいことが予測され、インプラントを含めた補綴治療の介入時期の考察の一手段となり得ると思われる。
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