本研究は総義歯装着高齢者で高い頻度で認められる口腔乾燥症に注目し、義歯装着者の使用頻度が高い義歯安定剤に生薬成分の配合により、唾液分泌増強作用を有する義歯安定剤の開発を目的とした。本年度は平成21年度の研究から選定した3種類の生薬エキスと試作義歯安定剤を用いて、これらの成分の含有量、組合せなどが試作口腔内潤滑補助剤の理工学的性質および唾液分泌量、AQP5量に及ぼす影響を検討する目的で以下のとおり実施した。 1.3種類の生薬から抽出したエキスを含有した試作義歯安定剤の粘度、操作性、粘着力に関する検討を動的粘弾性自動測定機DMA-Q800、万能材料試験機Instron 5565などを用い行い、適切な成分組み合わせの特定ができた。 2.試作義歯安定剤の保湿度および義歯床のぬれに及ぼす影響について接触角計PCA-1などを用い検討を行い、保湿・湿潤性および口腔乾燥症の観点から、適切な成分の種類、含有量を特定できた。 3.試作義歯安定剤の溶出成分の定性定量分析を高速液体クロマトグラフLC-10Aを用い行い、これらの成分の溶出濃度の一般毒性、唾液分泌量、管腔膜でのAQP5の量および分布に及ぼす影響について、ラットを用い検討を行い、適切な生薬の種類および含有量の特定ができた。 このようなデータの結果を踏まえ、保湿性、湿潤性の観点、口腔乾燥症の観点、材料のレオロジ学的観点から、有効な生薬成分および材料組成成分の組み合わせが特定でき、生薬成分は配合義歯安定剤の試作が可能になった。
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