本研究は総義歯装着高齢者で高い頻度で認められる口腔乾燥症に注目し、義歯装着者の使用頻度が高い義歯安定剤に生薬成分の配合により、唾液分泌増強作用を有する義歯安定剤の開発を目的とした。本年度は平成22年度の研究から生薬成分は配合義歯安定剤を試作し、試作生薬成分配合義歯安定剤の各種臨床効果を検討する目的で以下のとおり実施した。 1.デンタルプレスケールシステムを用い、試作生薬成分配合義歯安定剤使用による咬合力への影響の検討を行い、試作義歯安定の使用により、咬合力の向上が認められた。 2.テンションケージを用い、試作生薬成分配合義歯安定剤が義歯の口腔内維持力への影響の検討を行い、試作義歯安定剤の使用は、義歯の維持力向上に有効であることが示唆された。 3.Visual analogue scales(VAS)方法により、試作生薬成分配合義歯安定剤の患者の満足度の評価を行い、義歯の維持力、保湿性に関しては満足した結果が得られた。しかし、においおよび味に関しては、被験者によって、不満を訴えるケースも認められた。 4.通法に従い、試作生薬成分配合義歯安定剤の使用が唾液分泌量に及ぼす影響について評価を行った結果、本材の使用により、幾つかの被験者において、唾液分泌量の増加が認められた。 このようなデータの結果を踏まえ、保湿性、湿潤性の観点、義歯の安定性、維持力の観点から、今回試作した生薬成分配合義歯安定剤は臨床使用が可能であることが示唆された。しかし、幾つかの項目において満足した結果が得られず、更なる改良が必要であると考える。
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