今年度はジルコニア複合体を製作するための基礎データを収集する目的で、以下の2つの研究を主に行った。1) 基板強度の測定として、ジルコニアの曲げ強さに与える試験方法と試料厚さの影響の検討を行った。イットリウム添加部分安定化型ジルコニア(Y-TZP)とセリア部分安定化型ジルコニア/アルミナ複合体多結晶(Ce-TZP/Al_2O_3)を用いて3点曲げ強さおよび4点曲げ強さを測定した。0.1-1.2mmの範囲では、共に試料の厚さに関わらずほぼ一定の値を示し、Ce-TZP/Al_2O_3が有意に高い値を示した。3点および4点曲げ試験の荷重-たわみ曲線では、Ce-TZP/Al_2O_3は擬塑性変形のパターンを示したが、Y-TZPは弾性変形のパターンを示した。本研究の結果より、Ce-TZP/Al_2O_3が応力誘起転移し易く、より高い曲げ強さとなることが示唆された。2) HA-ガラス層処理条件の検討として、ジルコニアの機械的特性に与える焼成温度の影響の検討を行った。3種類のY-TZPを用い、それぞれにおいて異なる温度および時間で焼成を行い、オートクレープ処理を施した。いずれのY-TZPにおいても、焼成温度が1350℃ではオートクレープ処理の時間が増加しても単斜相への変態は認められなかったが、1450℃以上では処理時間の増加に伴い単斜相含有量の増加が認められた。また、1450℃以上で焼成したY-TZPはオートクレープ処理後のビッカース硬さが低下する傾向が認められた。本研究の結果より、Y-TZPでは焼成温度の影響は極めて大きく、焼成温度が高くなるとオートクレープ処理による低温劣化が生じやすくなることが判明した。
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