歯科用ジルコニアのコアフレームとしての臨床応用に際し、長期的予後の成否はジルコニアと他材料および歯質との接着耐久性に依るところが大きい。それゆえ、ジルコニアの表面改質により機械的嵌合力または化学的接着力の向上が不可欠である。本研究ではジルコニア表面へのサンドブラストおよび熱処理後に134℃で5時間オートクレープ処理を施した。表面処理後のジルコニア表層の組成変化はエックス線光電子分光分析(XPS)により確認した。表面処理後の接着強度はジルコニアおよび接着性レジンセメントとのせん断接着強さを測定することにより評価した。 XPS分析よりオートクレープ処理後のジルコニア表面には水酸基の存在が明らかとなった。対照実験としてオートクレープ処理後に150℃で3時間乾燥した試料から水酸基が検出されなかった。これらの結果よりオートクレーブ処理後のジルコニア表面には水酸基が吸着していることが推察された。 また、せん断接着強さを比較するとオートクレープ処理したジルコニアと接着性レジンセメントの接着強さはオートクレーブ処理後に乾燥処理した群と比較して有意に高かった。さらに、リン酸エステルモノマーを含む接着性レジンセメントは含まないセメントと比較してせん断強さが有意に高かった。 以上の結果からオートクレープ処理によりジルコニア表層に吸着した水酸基が接着性レジンセメントのリン酸エステルモノマーと反応してジルコニアと接着性レジンセメントの接着強度の向上に寄与したものと推察される。
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