歯科用ジルコニアは近年、高強度、高靱性化による物性の向上ならびに生体親和性の高さにより臨床応用の機会が増えている。臨床成績の向上のためにジルコニアと歯質および他の歯科材料との接着強度および長期耐久性が重要である。今年度の研究計画としてジルコニア表面をオートクレーブ処理することによる、表面改質および物性変化について調査した。ジルコニア表層にアルミナによるサンドブラスト処理後、陶材焼成炉にて熱処理を施し、ジルコニアの結晶構造の相変態を回復させた後、オートクレープ処理を施した。オートクレーブによる水熱処理によりジルコニア表層に水酸基が吸着することが、X線光電子分光分析により判明した。ジルコニア表面にサンドブラスト処理を施し表面形状を凹凸化させることで、吸着量が増加することも判明した。この吸着した水酸基が接着性レジンセメントのモノマー成分と重合反応し、接着強度を向上させる。特に、リン酸基モノマーを多く含有する接着性レジンセメントとの強度が向上したことより水酸基とリン酸基モノマーによる特異的な重合反応が形成されたと考えられる。長期耐久性に関しては、冷熱サイクル試験によりジルコニアと接着性レジンセメントの接着耐久性を確認した。 以上の結果より、ジルコニアに対する、オートクレープ処理はサンドブラスト処理と併せて施すことにより、ジルコニアの接着耐久性の向上に寄与する有効な処理方法であることが明らかとなった。
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