研究概要 |
本年度は日中にみられるクレンチングの有無の確認は,患者への問診によって行われ,上下歯列の接触に関する情報提供の後に患者自身の気付きに頼るところが大きい.今回,携帯型筋電計を用いて日中のクレンチング発生状況を調べ,患者の自覚の信頼性について検討した.本研究の主旨に同意が得られた岩手医科大学歯学部学生,並びに職員37名(女性14名,男性23名,平均年齢27.4歳)を被験者とした.日常生活環境下で生じるクレンチングを筋電図学的に判定するため,当講座開発の携帯型筋電計を用いて食事を含む5時間の側頭筋部筋電図記録を行った.本装置は日常生活を規制することなく測定が可能である.本研究では,最大咬みしめ時筋活動量を100%MVCとして,非機能運動時に20%MVCを越えて3秒継続して筋活動が認められた場合をクレンチングイベントありとし,各被験者をクレンチング群(Cl(+))と非クレンチング群(Cl(-))に分類した.また,各被検者には日中のクレンチングの自覚の有無について聴取した。その結果を以下に示す. 1.筋電図計測結果より,Cl(+)は23名,Cl(-)は14名に分類された. 2.自覚があるものは,Cl(+)で23名中9名,Cl(-)で14名中2名であり,クレンチングの自覚と発生状況の間に有意差が認められた(χ^2test). クレンチングの情報を十分に持っている歯科関連職種でも,仕事中は集中しているためクレンチングに気付きにくいことが考えられる.正確な状況の把握には,携帯型筋電計等による客観的な評価が不可欠であることが示された.
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