研究概要 |
無歯顎者の顎堤における簡便で客観的な評価方法の確立を目指し,当教室で検査用ヌケールを開発し模型上で有用性を明らかにしてきた.そこで今回,臨床応用可能な顎堤診断用スケールの改良と,この検査用スケールの臨床的有用性を検討した. 検査用スケールを臨床応用するにあたり,材質はこれまでのポリ塩化ビニルから,厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタレート(PET)に変更し,レーザー加工で製作することにした.さらに誤飲防止策として,デンタルフロスを通す小孔を設けた.被験者は無歯顎者30名,評価者は被験者1名につき3名とし,主観的評価と検査用スケールを用いた評価を行った.評価部位は左右第一大臼歯相当部顎堤とし,両評価とも高さ3段階(高い,中間,低い),形態4段階(U型,中間,V型,平坦)で評価した.さらに,被験者の使用義歯粘膜面の印象面上でデジタル式ノギスを用いて顎堤高さ,形態を計測し客観的評価とした.観評価と検査用スケールを用いた評価それぞれの客観的評価との一致度を検討するため,カッパ値を算出し比較した.主観的評価と客観的評価の関係では,顎堤高さ,形態の両者において,一致度を表すカッパ値は低かった.スケール評価と客観的評価の関係では,一致度は高かった.したがって,無歯顎者の顎堤検査に関して,新たに開発し模型上で有用性が明らかとなった検査用スケールは,臨床においても客観的評価と良く一致していた. 本スケールを用いて症例難易度を分類できることで,患者を補綴専門医や高次医療機関に紹介する判断基準となり,今後のエビデンスに基づいた歯学の発展に大いに貢献できると考えられる.さらに質の高い医療を提供することで患者のQOLの向上に寄与できると考えられる.
|