本研究は、義歯に付着した汚れ(デンチャープラークなど)を中長期的に分解できる防汚機能、強度性能を持ったレジンを開発することを目標としている。 I.複合型フッ素化アパタイト被覆二酸化チタンを配合した義歯床用レジンの試作 有機物質分解等の光触媒効果を持っフッ素化アパタイト被覆二酸化チタン(FAp・TiO2)粒子表面をシランカップリング処理することにより、複合型フッ素化アパタイト被覆二酸化チタンを作製した。 II.FAp・TiO2配合レジンの色調に及ぼす影響について FAp・TiO2の配合率は機械的強度や抗真菌効果、さらには色調にも影響するものであり、総合的にみた最適な配合率の決定が重要である。そこで配合率が義歯床用レジンの色調に与える影響について、光線透過率および測色から検討を行った。FAp・TiO2粉末を1・3・5・7・10重量%の割合で加熱重合型義歯床用レジンに配合し、試料を各6個ずつ作製した。比較にはFAp・TiO2を配合していないレジンをコントロール群に用いた。光線透過率の測定には、各試料に対し濁度計を用いて全光線透過率を求めた。色調は分光測色計を用いて各試料3箇所を測定し、その平均値を代表値とした。また、試料背景は白色板と黒色板を用いた。測定値からコントラスト比(Contrast Ratio:CR)、Translucency Parameter(TP値)を算出した。 FAp・TiO2配合義歯床用レジンの二酸化チタン配合率別による光線透過率は、配合率の増加に伴い透過率が小さくなり、有意差はすべての試料間で認められた。TP値は配合率の増加に伴い値が減少した一方、CRは値が増加した。また、光線透過率と各測定値(TP値、CR)との間では強い相関が認められた。TP値、CRともに5%を超えると試料間で有意差が認められなかったことから、FAp・TiO2の最適配合率は色彩学的検討から考えると5%前後であると示唆された。 なお継続して、複合型フッ素化アパタイト被覆二酸化チタンの有効性を次年度も検討を加えていく予定である。
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