研究は咬合性外傷における顎骨状態の診断及び新しい治療法探索への最初のステップとして、マウスを用いて歯に過剰な咬合力が加わるin vivo咬合性外傷モデルを確立し歯槽骨及び歯周組織における形態的、免疫化学的な解析を骨リモデリングに関連する調節因子、特に歯槽骨の吸収促進因子の探索を目的とする。まず、平成21年度は、マウスの上顎大臼歯咬合面にワイヤーを接着させ早期接触による咬合性外傷モデルマウス・in vivoモデルマウス実験系の確立・ケモカインの発現とその経時的変化の解析を行った。 (1)実験モデルマウスとコントロールマウスについて経時的解析(2)HE染色による歯根膜腔と骨性状観察(3)破骨細胞確認(マーカ:TRAP染色)(4)免疫組織学的分析:採取した組織切片にケモカインの抗体を用いて免疫学的解析を行い、ケモカインの組織における局在の検討を行うた。今年度における研究成果は、過剰咬合モデルラットの臼歯部歯根分岐部と根尖部の歯根側周囲にMCP-1陽性細胞が認められたと共に、その周囲の歯根膜組織の歯槽骨側にはTRAP陽性細胞が出現していた。これらの発現はメカニカルストレス(MS)刺激後4日目までに最大に達し、その後減少した。以上より、歯牙への過剰MSはMS部位の歯根膜細胞にケモカイン発現を上昇させ、破骨前駆細胞の遊走やリクルートを促進し外傷性の歯槽骨吸収を誘導することが示唆された。次年度の研究は実施計画であるin vitroモデルによる分子生物学的解析過剰な伸展刺激誘導下でのケモカインの発現が破骨細胞にどのように関係しているかを解明する。またケモカインが破骨細胞の分化・誘導及び活性化にどのように関わっているかを解析する。
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