平成22年度の研究実施計画にあげたヒト歯根膜細胞に持続的伸展刺激を与えるin vitroモデルを用いて過剰咬合性メカニカルストレスによる顎骨吸収時のケモカインの動態について検討した。(1)ヒト歯根膜細胞に伸展刺激を与えた時の経時的解析(2)ケモカインのmRNA産生量をReal Time-PCRにて解析(3)Western blot法にてタンパク質発現解析(4)シリコンチャンバー上で伸展刺激による解析を行った。メカニカルストレスを与えた後、ヒト歯根膜細胞でケモカインの発現が認められた。中でも破骨細胞形成関連のケモカインの発現が上昇していた。Real time PCR法にでmRNAの発現を調べた結果、ヒト歯根膜細胞でのCCL-2・CCL-3のmRNAの増加がメカニカルストレス依存性に認められた。さらに、CCL-2・CCL-3・CCL-5について蛋白の発現をWestern blot法とELISA法を用いて調べた結果、メカニカルストレス依存性に増加することが認められた。以上のことよりメカニカルストレスはヒト歯根膜細胞において破骨細胞形成に関連しているケモカイン・蛋白の分泌を増加させていたことが確認された。歯牙への過剰咬合は過剰咬合部位にケモカイン発現を上昇させ、破骨前駆細胞の遊走やリクルートを促進し、非炎症性の歯槽骨吸収を誘導することが示唆された。次年度は遺伝子改変モデルによるケモカイン及びその受容体KOを用いた解析(1)実験モデルマウスとコントロールマウスを用い経時的解析(2)遺伝子改変マウスを用いてメカニカルストレス誘導下での骨のリモデリングに相違についての比較検討(3)可能ならこの改変モデルより歯周組織細胞を急性単離して、そのケモカインや受容体の発現を解析する予定である。以上の結果から過剰な咬合力によって誘発される顎骨吸収に関与するケモカイン及びその受容体を特定し、これらの抑制方法についてその下流シグナル経路も含めて検討する。
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