研究課題
本研究では、フラーレンやカーボンナノチューブ(以下、CNT)などの炭素系ナノ微粒子(ナノカーボン)のバイオ応用の可能性を検討する為に、まずナノカーボンの親水化処理、その体内動態の可視化を試みた。CNTのバイオ応用への第一段階として、コハク酸過酸化物との反応により数百ppmの濃度で数週間に渡り沈殿を生じずに水中へと分散することに成功した。得られたCNT誘導体をマウスへと投与し経過観察を行った(最大4週間)ところ、状態観察・体重推移などから対照群との顕著な差異は見られなかった。投与後1-4週間のマウスから肺・肝臓を摘出し、透過型電子顕微鏡を用い観察したところ、各臓器へのCNT誘導体の到達・滞留が確認され、投与物質が血流に乗り各臓器へと到達している事が示唆された。また、CNTの蓄積が見られた臓器(肝臓)由来の細胞を用いて、刺激性の評価を行ったところ、著しい刺激応答は観察されなかった。今回行った細胞試験・動物実験などの結果からは、CNT誘導体の生体への顕著な毒性は見られなかった。CNTを細胞培養の足場材への応用を試み、作成した足場材へのタンパクや細胞のCNTへの吸着挙動の検討、表面形状の電子顕微鏡観察、および理論計算を行った。その結果、CNT足場材がタンパクや細胞の高い吸着能を持つことが示された。これは、グラフェンシートに比べ、CNTが曲率を持つために生ずる表面電荷の変化と、足場材を形成する際にCNTが3次元的に湾曲したマクロ構造を持つ2つの要因によるものと考えられる。また電子顕微鏡撮影のため、イオン液体を用い試料へ導電性を付与する前処理法を検討した。イオン液体塗布による前処理は乾燥プロセスを必要とせず、生物試料の構造変化を伴わない「生に近い」形態観察法として注目されている。今回は各種生物試料や、CNT足場材やフラーレンナノ構造体などナノカーボン物質の高解像度観察に成功した。
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