研究概要 |
本学で開発された実用型動物用半導体PET装置(Fine PET)は,申請者が過去に使用した骨シンチグラフィよりも空間分解能に優れ,3次元的な解析も可能で,歯科インプラント周囲の骨代謝活性についてより詳細な検討を行うことが可能であり,国内外を見ても他に例が無く極めて独創的かつ有意義である.前年度はこのFine PET装置を用いて,ラット脛骨へのインプラント体埋入モデルにおける,早期荷重負荷下のインプラント体周囲の骨代謝状況を経時的,定量的に評価した.その結果,負荷開始後7日目までインプラント周囲骨代謝活性は大きく上昇し,その後は徐々に下降した.このことから荷重を早期に開始した場合においても,インプラント周囲骨の骨代謝回転は一定期間亢進し,その後,一定負荷下であるにも関わらず定常状態に達することが明らかとなった.そこで今年度は,1.0mm未満の空間分解能を利用し,インプラントに付与した牽引荷重の荷重方向と骨代謝活性に着目し,インプラント体周囲のより詳細な解析と,マイクロCT画像より構築したFEAモデルにおける骨内応力分布との比較を行った.PET画像とCT画像の重ね合わせにより,皮質骨領域と比較して海綿骨領域で強い骨代謝が確認され,さらにインプラント体上部を牽引した荷重により,インプラント周囲では牽引方向の近位側上部と遠位側下部において有意な活性の上昇が確認された.FEAモデルとの比較により牽引した荷重が圧縮力として作用していることが示唆され,このことから応力集中の見られる海綿骨領域で活発な骨新生が生じているものと思われる.
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