研究概要 |
平成21年度においては,発光ダイオード(LED)を用いて,光線力学療法により発生する活性酸素種の測定およびその殺菌効果の検証実験を行った.光感受性物質として用いた物質は,がん治療薬として用いられているタラポルフィンナトリウム,口腔なプラーク染色液として用いられているエリスロシン,およびがん診断などで用いられているトルイジンブルー0を用いた,それぞれの光感受性物質の吸光波長を計測したうえで,光の波長が405nm,530nm,670nmのLEDを実験に用いた. 活性酸素種の測定:電子スピン共鳴装置を用いたスピントラップ法により,活性酸素種の定性分析を行った.スピントラップ剤として,一重項酸素をトラップすることができるとされているTMPDとヒドロキシルラジカルやスーパーオキシドをトラップすることができるDMPOを用いた.その結果,一重項酸素の生成はタラポルフィンナトリウムに670nmの光照射を行った場合とエリスロシンに530nmの光照射を行った場合に認められた.一方,トルイジンブルー0に670nmの光照射を行った場合には,ヒドロキシルラジカルの生成が認められた。これらの結果より,光感受性物質によって生成される活性酸素種が異なることが示唆された.今後,より詳細に活性酸素種の同定およびその発生メカニズムに関して調べていく予定である. 殺菌試験:殺菌試験には黄色ブドウ球菌を対象細菌として用いた.細菌懸濁液を各光感受性物質と混和後,光照射を行い,生存する細菌数を評価した.いずれの光感受性物質も100μMの場合には1mL当たり一億個の細菌を含む細菌懸濁液の菌数を15分以内にすべて死滅させることが分かった.また,10μMに光感受性物質を薄めて各光感受性物質の殺菌能を比較したところ,エリスロシンがもっとも強い殺菌効果を有することが分かった. まとめ:光線力学療法によって,短時間に効率的に殺菌できることがわかり,歯科治療など殺菌を必要とする治療に応用できる可能性が示唆された.
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