本研究の目的は、仮骨延長法を歯根に応用することと、組織再生の促進が期待できる低出力超音波パルス照射(LIPUS)を併用することでセメント質をはじめとする歯周組織の再生を促進させる効果を評価することである。 本年度の研究では昨年度の予備実験で延長装置の破損が問題になり、装置改良のため実験に遅れがでていたが、動物実験まで進めている。本年度ではビーグル犬の下顎前臼歯を対象に歯根延長法を行い、骨標本を作製し組織学的評価をした。一部でセメント質の延長が観察されたが、周囲骨との癒合や線維組織の形成が多く再生組織の評価が非常に困難なものが多かった。本実験で期待した組織再生のためには、さらに手術手技の精度向上、特に歯根の切断面をより正確に位置合わせすることと切断時の組織のロスを抑制する必要があるのではないかと考えている。歯根延長に関する条件については当初、7日間の待機期間を設定し、0.5mm/dayの速度で10日間の延長を行っているが、この条件についても手術手技の精度向上と合わせて再検討をしている。 また低出力超音波パルス照射に関しては予備実験での、照射群で初期条件の周波数3.0MHz、パルス幅2ms、パルス周期10ms、出力40mW/cm^2、15分間照射で組織再生を促す傾向を示しており、先程の実験結果が改善すれば、相乗効果の期待できそうな所見であった。 今後は上記の改善を目指してピエゾサージェリーで使用する骨切り装置を導入し、実験精度の向上を図りたいと考えて動物実験を計画中である。
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