研究概要 |
近年,歯科医療において歯科インプラントは欠損歯の補綴治療においてきわめて有効な方法の一つとして確立され,それとともに骨量・骨質の不十分な症例や,審美的な要求の高い難症例が増加している.そのような症例に対して正確かつ安全な手術を実現するため,これまで世界中で術前シミュレーションソフトウェアにより,最適な埋入位置や角度,方向,適応サイズを検証し,サージカルガイドをCAD/CAM法で作製するシステムが開発されている.しかしながら,従来の歯科インプラント手術ナビゲーションシステムは,術部ではなくモニタを見ながら口腔内という狭い環境の中で器具の操作を行わなければならず,術者の不安が生じるという問題点があった.そこで,本研究では次世代ヘッドマウントディスプレイとして近年注目されている網膜投影型ヘッドマウントディスプレイとAR(Augmented Reality)技術を応用し,術前シミュレーション結果を術部に直接的にオーバーレイすることで,術部と術前シミュレーション像を同時に重ねて見ながら安心して手術が行えるナビゲーションシステムを構築した.平成21年度は基本システムの構築,および画像合成手順の提案と実装を達成した.USBカメラと光学透過型ヘッドマウントディスプレイを用いた検証実験により,640×480pixelに対して画像合成誤差がx軸方向に3.25%,y軸方向に2.83%であることを確認した.平成22年度は,実環境に適応したデュアルエクスポージャ機能と透視投影行列のサンプリング手法の開発を進め,画像合成精度とロバスト性の向上をはかる.
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