研究課題
ヒト歯根膜幹細胞による神経再生について解析を行うため、多分化能を有し胚性幹細胞関連遺伝子を発現するヒト歯根膜細胞株(1-17細胞株)を用い、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来細胞(PC12)の神経細胞分化、細胞遊走、およびアポトーシスについて検討を行った。その結果、1-17細胞株はPC12の神経細胞分化ならびに細胞遊走を促進し、アポトーシスを抑制した。また(1)1-17細胞株にNGF中和抗体を添加すると、PC12の分化誘導および細胞遊走が阻害されたこと、(2)1-17細胞株の培養上清がNGF添加培養と同様にPC12の抗アポトーシス遺伝子発現を上昇させたこと、(3)NGFのreceptorであるTrkAのチロシンキナーゼ阻害薬K252aが1-17細胞株培養上清の神経細胞分化および細胞遊走促進作用を抑制したことから、1-17細胞株の産生するNGFがPC12の神経細胞分化、細胞遊走、およびアポトーシスに影響を与えていることが示唆された。さらに(4)ELISA法により1-17培養上清中には50pg/mlのNGFが含まれることが明らかとなったが、PC12に同濃度のrecombinant NGFを添加しても神経細胞分化および細胞遊走は誘導されなかったことから、1-17細胞株はNGFだけでなくNGFと共力作用をもつタンパクを産生していることが推察された。このタンパクを同定することは、効率的に神経再生を行う上で非常に意義のあるものであると考えられた。そこでMicroarray法を用い、1-17細胞株と神経細胞への分化能を有さない他のヒト歯根膜細胞株との遺伝子発現量の比較を行った。その結果1-17細胞株で2倍以上発現量が多く、なおかつNeuroscienceに関与する17遺伝子が同定された。さらに二次元電気泳動法を用い、1-17細胞株と神経細胞への分化能を有さない他のヒト歯根膜細胞株とのタンパク合成量の比較を行い、1-17細胞株で発現量の多い2種のタンパクを確認した。今後これらの遺伝子およびタンパクについて解析を行い、機能を同定する予定である。
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