研究概要 |
本研究では,生体用金属材料として代表的なTi合金やCo-Cr合金を代表とする金属基生体材料の生体内環境内でのフレッティング摩耗について,環境因子である疑似体液の影響や荷重,往復移動振幅や周波数等の力学的因子の影響について調査し,また環境因子や力学的因子に関する系統的な情報を得ることを目的とした. 今年度は,CP Ti,α+β型Ti-6Al-7Nb,β型Ti-Al-Mo-Zr-Nb合金について,37℃の人工唾液中で往復フレッティング摩耗試験を行った.サイクル数は10^5とし,相手材はTiとした.また,ヤング率低減と骨との嵌合力向上を目的に作製したTi/β-TCP複合材料について前述の実験と同様に摩耗試験を行い,摩耗痕から求めた体積減少量から摩耗量の評価も行った.代表的な摩擦係数(μ)-時間曲線(t)では,往復振幅が一定以上で摩擦係数の変動幅は一定となり,曲線も時間に対し横ばいとなった.異なる組成同士で平均摩擦係数μを比較すると,単相材であるCP TiとTi-Al-Mo-Zr-Nbのμは2相材であるTi-6Al-7Nbに比べ若干高い値を示したがいずれもμ=0.7程度であった.前者は往復運動であり,後者は一方向への回転運動であるという違いがあるが,ピンオンディスク試験の結果と比較すると,いずれの合金でもフレッティングによる摩擦係数の方が高く,特にTi-6Al-7Nbではピンオンディスクとフレッティングの差が最も大きかった.この傾向は摩擦摩耗試験法の違いによるものであるのか,材料によるものであるのかは未だ不明である.しかし,ピンオンディスク試験の結果では,摩耗表面直下での加工変質層の変形挙動は,定性的には結晶構造のみによって決定され,その程度は荷重,すなわち接触面積や接触応力が関与する事が示唆されており,今後荷重依存性や摩耗量測定など更に詳細な調査を行う必要がある.
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