研究概要 |
本研究を遂行するにあたり、口腔組織における原形質膜破壊と修復治癒機構の解明を目的とし研究を行なった。2007年に本研究の一部である歯周組織おもに歯肉と舌筋におけるブラッシング後の経過観察結果を,Journal of Dental Research (86(8):769-774,2007)にて報告した。この結果に基づき,損傷歯髄細胞における損傷状態と修復過程の観察を行なった。10週齢以上のマウス下顎中切歯に注水下にてエアタービンで露髄程度の機械的損傷を加え15分後,30分後,3数時間後にそれぞれ4%パラホルムアルデヒド溶液にて還流固定し,歯牙を周囲組織と共に摘出後,EDTA溶液にて脱灰し,10μパラフィン切片を作成した。切片は損傷細胞を同定するためC-fos抗体(2%bovine serum albumin,1:100希釈)にて染色後,蛍光顕微鏡下で観察を行った。同様に無損傷対照群として同個体上顎中切歯歯髄細胞切片も同条件下で染色後,観察を行った。その結果ラット歯牙において,タービン損傷後15分,30分後の歯牙切片においてC-fos抗体に濃染した損傷歯髄細胞が認められた。同時に、歯牙の形成過程,すなわち初期発生段階における歯髄内ならびに周囲への神経・血管系の分布状態を明らかにすることは、歯髄細胞の再生研究領域において極めて重要な課題であり,この領域においては未だに詳細が明らかにされていない。今回マウス胎仔(12.5~15.5日)を使用して歯胚形成初期における神経分布状態についての観察を行なった。深麻酔下にて妊娠マウスより13.5日~15.5日までのマウス胎仔を摘出し,4%パラホルムアルデヒド溶液にて固定後、通法に従い凍結切片とパラフィン切片を作成した。試料は賦活処理後、神経系(PGP9.5)血管内皮系(CD31)の標識抗体にて,それぞれ免疫染色後,蛍光ならびに実体顕微鏡下での観察を行なっており,現在研究は継続中である。
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