損傷歯髄細胞の膜修復機構研究の遂行にあたり、口腔領域組織における損傷細胞の修復治癒機構の解明を目的として研究を行った。本研究の一部(歯肉と舌筋におけるブラッシング後の組織損傷状態と修復について)は19年度にJournal of dental research〔86(8):769-774〕にて報告した。これらの結果に基づき損傷歯髄細胞における損傷状態と修復過程の観察を行った。また損傷歯髄内における神経線維の状態を同様に観察した。試料には10週齢以上のラットを使用し、ラット下顎中切歯遠心側中央部位に注水下でエアータービンにて点状露髄程度の機械的損傷を加え、1時間、3時間、24時間経過後にそれぞれ4%パラホルムアルデヒド溶液にて灌流固定を施した。なお非損傷対照群として同個体反対側下顎中切歯を使用した。歯牙は周囲組織と共に摘出し、EDTA(4℃)溶液中にて約6週間脱灰処理後、凍結試料を作成しそれぞれ10μ切片とした。染色には損傷細胞を同定するためC-fos抗体を使用し、また歯髄内の神経線維を観察するため、神経系に特異的に反応するProtein Gene Product9.5 (PGP9.5)を使用し染色後、蛍光ならびにレーザー顕微鏡下での観察を行なった。 また歯髄の形成過程、すなわち初期発生段階における歯髄内の神経・血管系の分布状態の詳細は未だ明らかにされておらず、歯髄細胞の再生研究領域において極めて重要である本課題において同様に観察を行っている。試料には胎生11.5日から16日までのマウス胎仔を使用し、4%パラホルムアルデヒド溶液にて数日間固定後、通法に従いパラフィン切片を作成した。血管系の染色にCD31 (PCAM)を使用し神経系の染色PGP9.5にて染色を行い、蛍光顕微鏡下での観察を同様に行っており、両研究は現在継続中である
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