研究概要 |
口腔領域は摂食をはじめとして多くの重要な機能を担っており,歯の強度特性を検討することは重要なことであると思われる.超高齢化社会の到来とともに,歯を保存することが高齢者のQOLを維持するために重要な要因であることが認識されている.歯がどのような強度分布をしているかを知ることは高齢者などの歯の破折を防ぐための修復物の設計には必要不可欠な情報であり,意義の高いことと考えられる.さらに歯の破折を防ぐことにより,抗加齢医学への貢献が期待される.歯は歯冠部分と歯根部分からなり,歯根部での破折は歯冠部とは異なる様相を呈し,重篤な症状になり,抜歯になる可能性も高い。そこで今年度は歯根破折の解明のため,歯冠部および歯根部における構造等の違いに着目し,研究を進めた.最初に、歯冠部および歯根部におけるナノ硬さおよび弾性率,化学組成の違いの検討を行ったところ,ナノ硬さおよび弾性率,化学組成において違いがみられた.すなわち,ナノ硬さにおいて,歯冠部分が歯根部分よりも硬く、弾性率も大きいことが確認された.また,カルシウム量に関しても,歯冠部の方が歯根部よりも多かった.さらに赤外線吸収分光法により歯冠部および歯根部の比較検討を行ったところ,コラーゲンおよびハイドロキシアパタイトともに成分比が異なることを確認することができた.そのうえ,基礎的な実験を行う際における動物種の構造的な違いを検討するため,象牙質中の象牙細管の数の検討を行った.人歯の歯冠部分と牛歯の歯冠部分において,象牙細管数の分布に違いはみられなかった.
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