研究概要 |
本研究の目的は、接着タンパク制御による新たなインプラント材料を解明することである。歯科インプラントは口腔内に露出しているため、粘膜上皮との界面から感染が容易に起こる。そのため粘膜上皮とも密に接着する形状を検索し、生物学的封鎖の向上、および経時的加齢にも対応したインプラントを開発する必要がある。平成21年度の研究成果について、直径15mmのチタンディスクを作成し、表面研磨およびサンドエッチング・ブラスト処理を施したチタンディスクの試料を作成した。また、上皮組織を想定してマラッセ上皮遺残細胞を12継代まで培養を行い、経時的加齢モデルとして実験に用いた。また、歯槽骨骨髄細胞を想定した大腿骨骨髄細胞を4週齢および80週齢の雄性ラットより採取し、機能変化をPCR法にて骨関連タンパクmRNA発現量を検索した。さらにマラッセ細胞は試料上にて培養し、経時的変化を蛍光抗体法にて細胞形態を形成するactin filament、接着関連タンパクであるTotal-ErkおよびFocal adhesive kinese、免疫関連タンパクであるβ-Defensin、インターロイキン(1,2および6)のタンパク発現を検索した。チタン試料上での培養は、通常培養と比較して細胞増殖の割合、細胞形態の伸展に変化が認められ、接着タンパクの発現が減少した。また、継代数を重ねた細胞は免疫関連タンパクの発現が減少した。骨髄細胞のPCRでは、細胞増殖および骨形成因子であるBMI-1およびcbfa1-α発現量に変化が認められ、P57遺伝子発現変化から細胞老化が認められた。以上の結果より、チタン試料を用いて経時的加齢を想定した実験が可能であった。
|