再生医療分野において、生体吸収性高分子材料であるポリ乳酸(PLA)は生体適台性に優れるため、組織再生用足場材料として応用されている。本研究ではPLAに、同じく生体吸収性のポリグリコール酸(PGA)が配合されたPLA/PGAナノファイバー不織布シートのin vitroにおける特性を評価した。測定試料はPLA100%のナノファイバー(PLA100)と、PLA/PGA比が75/25の場合のナノファイバー(PLA75/PGA25)、PLA/PGA比が25/75の場合のナノファイバー(PLA25/PGA75)からなる3種類の不織布シートとした。ナノファイバーの生分解速度を確認するため、各試料をリン酸塩緩衝液(pH=7.4、37℃)に2週間浸漬後、それぞれの重量変化率を測定した結果、PLA100が-2.43±0.60%、PLA75/PGA25が-9.42±1.41%、PLA25/PGA75が-38.7±10.03%であった。また擬似体液中でのアパタイト活性を調べるため、各試料を擬似体液(ハンクス溶液、pH=7.4、37℃)に1、3、7日間浸漬後、それぞれの試料表面を電界放射走査電子顕微鏡により観察したところ、PLA100とPLA75/PGA25については浸漬1日後ですでにアパタイト結晶が生成していたが、PLA25/PGA75については結晶生成物をほとんど確認できなかった。ハンクス溶液浸漬3日後ではそれぞれの試料表面におけるアパタイト結晶が成長し、浸漬7日後ではすべての試料表面において無数のアパタイト結晶の析出が確認できた。これらの結果により、PLAに対するPGAの配合量が増えるにしたがい、ナノファイバー不織布シートの生分解性は増加し、初期のアパタイト生成能は減少することが示唆された。
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