本研究では、生体材料として応用できる二酸化チタンセラミックスの創生を目的としている。焼結体作製では、1次粒子の異なる種々のアナターゼ型二酸化チタン粉末を成形・焼結し、その触媒能の効果を検討した。1次粒子が微細なほどその触媒能による脱色・抗菌効果が高かった。焼成条件温度が高くなると、焼結が進み体積の収縮が大きくなり硬度が増し、アナターゼ型二酸化チタンからルチル型二酸化チタンに転移し、触媒能である脱色・抗菌効果は減少した。焼成条件温度を高くすると、アナターゼ型、ルチル型ともに、表面粗さは減少した。また1次粒子が微細なものは粒子が大きいものと比較して低温度下でも表面粗さが減少する傾向があった。 口腔インプラント体材料として要求される性質は、骨埋入部分では骨細胞との適合性が良好であること、また相反して口腔内細菌から感染を除去・予防することが必要である。当該年度にて、アナターゼ型二酸化チタンの焼成温度を変化させ、傾斜機能を有する焼結体試料を作製し、その評価としてin vitro試験にて細胞分化の状況を知るため、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性を検討した。この結果、焼成温度が700度と低い焼結体上に培養したマウス由来骨芽細胞(MC3T3-E1)では、細胞数の増加はわずかしか確認されなかったが、ALP活性が高く確認された。これは同温度で焼成したルチル型試料と比較して大きな値を示した。触媒能を有するアナターゼ型二酸化チタンがALP活性上昇に関与することが示唆された。
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